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「そもそも俺とお前は運命なのだ。経緯が多少すりあわなくとも問題はない」
「っ、あるわ!俺はお前になんか、運命感じてねえよ!」
そこまで叫んだところで、くらりと貧血のように目が回った。まだ具合が悪かろう、という相手の言葉はやさしいが、この目の前の男に非がないかなど、まだわからない。信用できるはずもないのだ。しかし、自分の記憶に対して、相手との会話が成り立つことを見ると……どうやら先程の出来事は現実のようである。
「……いったいなんなんだ、お前……。さっきのは夢じゃなかったのか……」
「夢であればよかったのだがなあ、残念ながら現実だ」
「お前が言うなよ……」
はあと大きくため息をついた操が相手の格好を見ると、やはり人の形である。ここまでくれば自分が見たものが幻想でもなんでもよい。真実を確かめるしか道はなかった。
「お前……さっきまで、耳と尻尾……あった、よな……?」
「ああ。それは夢ではない」
「っ……」
ふわりと笑って答えた男が立ち上がると、まるで魔法のようにぽんっと耳と尻尾が生えた。思わず声を失った操に対し、男はまた笑って、それを消した。
やはり現実なのか、それともまだ夢の中なのか。操がはかりかねつつも、目の前のことを受け入れようとしていると、男は窓から外をのぞき、ああ、よい頃合いだ、と静かに呟く。
「今は新月の力が弱まってきている。そろそろ大丈夫だろう」
「?」
「お前、「此処」にきたのは初めてだな?」
「は?」
「説明するとな……俺は神様だ」
「……」
男の発言に、操はすっとスマホを取り出す。男が慌ててそれを取り上げた。
「いや、通報しても無駄だからな!?というか、さっきの力を見て信じろ!?」
「てめーなんざ、どうみてもバケモンで変態だろうが!神様なんて図々しい自己紹介してんじゃねえ、狐野郎!」
思わず口悪く反論した操に男は驚いて、一瞬閉口したが、ちっと舌打ちをして、腕を組んで話し始めた。
「この裏の坂を登ったところに神社があるだろうがっ!俺はそこの神で、この一帯の総元締めだ!」
「はあ?」
「そこの守り神だ。近くの神社は分かれたものも別のものもあるが……この地域一帯の管理をさせてもらっている」
そう言われて操は裏にある神社のことを思い出した。
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