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体が熱い。
気持ちいい。
気持ち悪い……。
さっきからずっとその繰り返しだ。
快感が来ては吐き気が胃の中からせりあがってくる。こんな感覚は初めてで、その波に揺らされては視界が涙で滲んだ。
(くそ……っ、なんだってんだ……っ!)
自分は……ただ出かけただけだ。そう、いつも通り、深夜のコンビニに出かけただけ。
なのに、この、現実ばなれした展開と感覚はなんだ?
そうか、これは夢か……夢なんだな、そう思っても目は覚めず、ただ気持ちの悪さと射精前のなんとも言えない悪寒が繰り返される。そして、その美しい指先が触れた先から、ぞくぞくと快感が生み出されていくのだ。自分の細腕では抵抗しきれない。それに体格差に本能でビクつく。羞恥もあって蹴り倒してやろうという気持ちはあるが、力が入らなかった。
目の前の瞳が心配そうに自分を見つめている。こんな男、今日、初めて見たはずなのに。どうしてこの視線から目をそらせないのだろう。その目の中で自分の黒髪が揺れた。
抵抗できるだけの体力はなく……それに、なぜだかこの指先が、揺れ動くこの気持ち悪さから解放してくれるような、そんな気持ちでその腕に縋った。
「ほら、力を抜け。そう……いい子だな。抵抗するんじゃない」
「あ……ぁああっ!」
「ほら……気持ちいい方に感覚を任せろ……俺しか見てない」
耳元に響く甘く低い声に煽られて、体の緊張と緩和が繰り返される。
まるで性行為の時のような声が自分の喉から漏れていく。組み敷かれた体からずるずると何かが取り出されていく感覚。自分の内側を暴れていた気持ち悪さが、その爪先からかすめ取られていく。
(なんだ……っ、これ……)
視界の端に映った黒い霞のようなもの。それが目の前の男の手によって引き出され、それと同時にまるで絶頂時のような強い刺激が体に走った。
「ああんっ!!……んんっ……ぅう……、あ、や……や……っ」
「……ほら、いい子だ。もう少し……」
汗ばんだ肌の下で、自分の欲望が熱を放ちたがっている。ずる、ずる……と自分の肌から何かが引き剥がされる気持ち悪さに……快感が勝って熱が頬と下腹部に溜まっていった。
(っ、くそ……どうして!)
……どうして、こんなことになった?
黒崎操は霞む視界と思考の中で、夜の始まりを思い出していた。
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