プロローグ

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*** (……あっち……)  金曜日の夜、飲み会もそこそこに済ませて、一人きりへの家へ帰ったところまでは覚えている。週末の疲れがたまった操はスーツを脱いで下着だけになり、ベッドの上に寝転がっていた。  無駄に広い部屋にどんとあるキングサイズのベッドは心地よくも広すぎる。スマホをいじったままいつの間にか眠ってしまっていたらしい。  シーツとの間にはりついた汗を不快に感じ、操はゆっくりと起き上がった。癖のつきにくい黒髪を手櫛で梳かし、首を振って覚醒する。そろそろ髪を切らなきゃな、と目に悪そうな前髪を少し指でつまんだ。  時計はちょうど深夜零時を指しているように見えた。外で犬の鳴き声がする。それはどこか遠くに響いているような違和感があった。  眠ろうと思っても、なぜだかざわりと心が騒いで眠れない。暑さか、と諦めた操はベッドから出ることにした。 (変に汗かいたな。酒飲みすぎたかぁ?)  がしがしと頭を掻いて目をこする。部屋着のスウェットを着て、薄いよれたカットソーを着ると、ふわあっと欠伸が漏れた。 「やべ、ちょっと腹減ったな……」  一人で住むには広い部屋に独り言が響く。慣れた空間ではあるが、暗い夜中の静かな部屋では虚しさが増した。事情があるとはいえ、3LDKは一人には広すぎる。 (カップラーメンでも買いに行くか)  買い置きのないことはわかっている。目覚ましがてら、夜の散歩にでも繰り出そうと操は欠伸を噛み殺し、財布と鍵だけを持って部屋を出て行った。
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