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(って、なんで、こんなことになってんだよ!?)
回想から現実に戻ってきた操は、はあはあと息を荒げては、二回目の吐精を終えた。夜とはいえ、こんな往来で痴態を晒し、名も知らぬ男の手にいいようにされたことが記憶として蘇ってくる。大きな獣の耳を動かす男はどこか満足げに目を細めて笑った。
「ほら、もう気分がよくなっただろう?」
「っ!さわんなっ!」
「む、礼もなしか。あのままだとお前は「悪意」に食われていたというのに」
「はあ!?意味がわかんねえよ、この狐ヤロウが!」
思わず学生時代のような物言いで威嚇するが、相手はきょとんとした後に、自分の手のひらをべろりと舐めている。先ほど其処に精を吐き出したことを思い出し、操は顔をかっと赤くした。
「そ、そんなのなめるな!」
「そんなの、と言われても、依り代の精液とあれば、俺の栄養みたいなものだから」
「……は?」
変態か……?と気が遠くなったが、相手はいたって真面目な顔をしている。
(こんな意味のわからん狐にだまされて、なんなんだこの夢は!?起きろ……起きろ、俺!)
そう思って目をぎゅっと閉じても、目の前にはまた近くなった狐男の顔があるだけである。
「うおおお!びっくりさせんな!」
「随分と喧しい依り代よ。お前だと思ったのだがな……違ったか?しかし、これは美味であったし」
「っ!?」
そういって、ぺろぺろと指を舐めている相手をみて、変態だ!と決定づけた操は、とにかくこの場を去ろうと相手を睨みつけた。
「どこの誰かしんねーが、ひでえコスプレしてんな、この狐!」
「先ほどから、狐狐としか言わないが、俺にだって名前はある」
「っ、知るかよ!」
「ミタマだ」
「は?」
「ミタマ様と呼べ」
少しイラついたように顔を傾けた男はそう名乗った。
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