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操が呆然としていると、急に周囲がざわつきだす。
「な、なに!?」
「はあ、時間が長くなってしまったな。早めに片付けてしまうつもりだったが、お前が抵抗するから悪いんだ」
いきなり指をさされて怒られ、はあ!?と操はまだ眉を吊り上げた。
「いきなり襲ってきた変態に言われたくないわ!」
「だから、ミタマ様と呼べといっただろうが」
「うるせえ、この狐が!」
「っ、口の悪いやつめ!お前に残っていた悪意が発情反応して雑魚が集まってきただろうが!」
「ああ!?」
ミタマのいうことは理解できなかったが、さっきまで静かだった周囲にざわざわと「影」の気配を感じるのは確かだ。
(な、なんだ……?)
ぞくりと背筋が凍るような寒気。周囲を見渡すと、ところどころに赤い目があり、その影は……大きく羽ばたいた。
「はっ、鴉どもが……匂いに誘われてやってきたか。こっちに下がっていろ」
「な……な……?うおっ!?」
大きく……何枚もの羽をもった鴉が四方八方から操に向かってくる。大きな嘴が襲い掛かるその前に、ブォンと豪風が唸りをあげた。
「ひっ……」
「下がっていろと言ってるだろうが。お前はここにいればいい」
「っ!?」
ぼとりと落ちている大きな鴉の首がまだ動いている。浮世離れした、悪夢の光景に思わず吐き気がせりあがってくる。無数の赤い目が襲ってくる。さっきの暗闇に囲まれたことを思い出し、恐怖が膨らみ、思わず目を閉じた。
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