3320人が本棚に入れています
本棚に追加
/2515ページ
そいつはな欲しい時に求めても遅いからだよ、余剰物資を規定数以上置くのは禁止されているが、そんなことは知ったこっちゃない。俺は品行方正な官じゃないぞ?
「そのうち城外演習をするので、それ用のものだ。郡内からの反発はどの程度あった」
「徐刺史の統治が素晴らしいのと、荊州各郡は穀倉地帯でもあるのでこの位の徴発ならば特にそのような恨みもございませんでした、ただ……」
「なんだ?」
「この城に堆積してある分を、飢民に与えれば死なずに済むものもいるだろうなと」
それは言う通りだな。そう言う奴らだって民なんだ、恩恵を受ける資格はある。ただ甘い顔をするのは良くないが、手を差し伸べないのも褒められたものじゃない。
「では文聘はどうするべきだと」
「城外で構わないので、そのような民に今日の糧を与えて頂きたく思います」
じっとこちらを見詰めて提案をしてくる。それによって得られるのは僅かだ、失うものもまたわずかだが。ではそれと無関係のところで起こることと言えばどうだ。
「……よかろう。島介が認める、文聘の思うようにするんだ。責任は俺が取る」
「ありがとうございます! 直ぐに準備を」
そそくさと退出する文聘、目が輝いていたな。あいつはそういうやつってことだ、だがきっと戦になれば非情にもなれるはずだ。
◇
城外での訓練風景も日常化し、いよいよ秋も深まって来る。南陽の黄巾賊の動きが更に激しくなり、バラバラに動いていた奴らに俄かに統率が感じられるようになってきた。
最初のコメントを投稿しよう!