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江夏、江陵の平原と南陽の平原を結ぶ隘路が二本あって、西が宜城県、東が南新県だ。この南新県の城が黄巾賊に襲われているとの伝令が陸安にやって来て、それが西陵へと知らされてくる。直ぐに三人を集めて話し合いを行う。
「南新城は賊徒に取り囲まれ、何とかこれを防いでいる模様」
張遼が地図を広げて、場所と地形、双方の規模を論じる。城兵は五百以下、住民を動員すれば一か月は抵抗できるだろうとの見通し。一方で黄巾賊は三千とも五千とも言われている。
「南新県は江夏郡の領域、現在太守が空席なので徐刺史の判断で対応されるでしょう」
権限の所在を明らかにする、文聘としても気にはなっているようだな。典偉は別にどうでもといったところか。
「一刻も早く敵を退けるべきです!」
「みだりに兵を動かすのはもってのほか。ここは命令を待つべきでしょう」
ほう、二人の意見が割れたか。どちらも間違っていない、性格による違いでしかないぞ。南新県から華容もここも等距離、今頃あちらにも伝令がついて対応を模索してるだろう。二人がこちらに顔を向ける、決めろってことだよな。
「最初に言っておく。俺は、俺を頼る者を見捨てはせん」
文聘が眉を寄せる、そういうながれだものな。
「だからと己が秩序を乱す元になるのはお粗末だ。ゆえにこのように行動する。荊州軍の長距離行軍演習を行うものとする、目的地は南新県だ。張遼は演習の準備を行え」
「御意!」
「文聘。華容へ早馬を出し、南新への援軍許可をとるんだ。同時に偶然南新への行軍訓練中だと伝えろ」
「軍の私物化だと幕僚に苦言を呈されるでしょう」
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