三国志島介の志編(180年代

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 地形を頭に入れて陣地へと戻る。簡単な囲いを作り、天幕を揃えた場所では夕餉の支度が行われている。狩猟によりイノシシを仕留めた奴が複数いるらしく、今夜は肉入りの大鍋から汁物が飛ぶように売れていく。  食う位は好きにさせたいが、この時代食糧難が激しいんだ。産児制限でもすれば良いんだろうが、宗教的にも時代的にもそういうものはない。  補給部隊を連れて典偉が追いついてくる、明日はこの陣に物資を残して出撃だ。心配なのは兵の質だけ、こればかりは一度戦わせてみないとわからん。最悪、敗北してもこの三人だけは失わないようにしないとな。殺したって死ななそうだが。  月明かりがあるだけの未明に起こされる。早めに寝て、早めに起きて、身体と頭を覚醒させる。水を飲んで内臓も起こしてやり、少しだけ強めの塩の握り飯を一つだけ食べておく。 「島武猛従事、準備整いました!」  千人長が報告を上げて来る。この陣地は兵五百で防衛させる、この前力比べで辞退した奴を一人残して指揮官にして、伯長五人とで保全を命じた。籠もっていればいきなり窮地にはならない、一大事あらば狼煙を上げれば援軍に来るとだけし、もし保全が無理になれば火をかけて西陵へ逃げ戻るようにさせる。決め事は少ない方が間違えない。  空が少しだけ明るくなってきたので足元が見えるようになり行軍速度が上がる。まだ眠りについているだろう黄巾賊の陣地が視界に入る場所までやって来た。 「聞け! 我等は荊州の治安を預かる存在だ。民に手をかけ、その生命財産を奪う輩を俺は許しはしない。黄巾賊の捕虜は不要だ、首魁以外は全て切り捨てろ。総員、続け!」 「うおぉぉ!」
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