三国志島介の志編(180年代

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 鬨の声をあげて二千の州軍が一直線あの大幕へ向けて進んでいく。声を聞いて目を覚ました奴が「敵だ! 敵が攻めて来たぞ!」大声を上げて警告する。それで起き上がって来る奴らが居ても、頭がはっきりとしないうちに「逃げろ!」保身を図る者が多かった。 「火を放て! 軍旗を掲げろ! 単独で行動するな、秩序をもって行動せよ!」  あらん限りの大声で方針を命令する。現場で争い始めたら視野が狭くなる、何度でも声を出してやらんとな。新兵を使って戦う、そういうつもりでやっているぞ。実際は少しくらい経験があるんだろうが、そんなのにすがっても仕方ないからな。 「張文遠これにあり! 賊共かかってこい!」  騎馬して縦横無尽に駆け回っている張遼はさながら鬼神のようだった。典偉も護衛として控えているが、戦いたいのかそわそわしているのが分かる。この位で失策などせんよ。 「典偉、敵将をここへ引きずってこい!」 「わかった、任せろ!」  五十人の手下を連れて真っすぐ大幕へと駆けて行った。さて、文聘の姿を見ると広く戦場全体を確かめ、こちらに不利はないかを監視していた。 「どうだ文聘」 「……一部で統率を回復する場所があります」  指さす先には二カ所、確かに賊が集まって動き始めている点があった。 「半数を率いて文聘が左、俺が右の集合拠点を潰す。出来るな」 「無論、お引き受けいたします!」 「よし。部隊は俺に続け!」  控えていた千人長を指名して、五百を連れて敵の指揮官が居そうな場所へと突撃を仕掛けた。多少の抵抗を受けても、こちらの勢いを弾き返すことまでは出来なかったようだ。
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