三国志島介の志編(180年代

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 県の軍兵なぞ三百、五百の世界だ。それも殆どがその時限りの農兵。お互い様だから機敏な戦いなど起こり様がないんだ、何をするにしても先に情報が入って来る。それが無いのが唯一、内側からの攻撃だな。 「それにしても、秋の祭りなど催してもよいのですか? 貴重な食糧を多く消費してしまいますが」  それな。張遼の言いたいことは解るぞ、食える分しか生き残れない民に、無制限に与えるのは破綻をきたすってことだろ。 「人が働くには活力が必要だ、俺はそう思うんだよ。民が稼いだものを民に還元してなにはばかることがある」  米なんて民の口には入らないで、雑穀や木の皮を食べて生き延びているようだが、そんなのは普通じゃない。労働者には相応の食い扶持があって、初めて諸々気が回るようになる。 ◇  秋祭りが開催される当日だ、西陵の住民にしてはやけに多い人数が集まって来た。周辺の奴らも食事にありつけると聞いてこぞってやってきたんだろうな。 「守県令、流民の類を追い出しますか?」  巡回警備責任者が、余計な奴らがいると報告を上げて来る。 「いいさ、放っておけ。ただし、治安を乱すような真似をしたら拘束しろ」 「御意!」  祭りを楽しむ分には構わんよ、何ならそのまま居ついてくれたってな。土地は幾らでもあるんだ、人口が増えたらそのまま領域の拡大に直結する。昨年種もみだけでなく、色々と試してみるようにと余計に手元に残させた、その収穫が上乗せである。
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