三国志島介の志編(180年代

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 石高が上がっていても、俺が着任した時の数字で納税するから差があるんだよ。それを還元していつもの納税額にする、結果来年は更に収獲が多くなるはずだ。設備投資に回せば苦労は減って暮らしが潤うだろう。 「親分、あっちに」 「ん、どうした」  典偉が指さす方向に、見慣れない一団が居た。そいつらはこちらに真っすぐ近づいてくる。州の官吏だな。騎馬したまま近くに来た、十人程のうち、銅印黒綬をつけているものがこちらを見ている。 「私は荊州西曹縁の習範、この騒ぎはなんだろうか」  領内の巡回か、東が人事で西は兵事だったよな。いや、人事と政治以外と括るべきか。 「西陵の秋祭りだ、一年の労働を称賛する場だよ。参加していかないか」  出来るだけ軽い空気になるようにしてはみたものの、どうにも敵意ばかりが感じられる。目が何かを語ってるんだよな。 「それが島守県令の、私へのする対応ということで良いのか?」  俺の方が官職では上役になっているはずだが、どれだけ悪くても同格だぞ、どういうことだ? 文聘が近寄って来て耳打ちする。 「賄賂を求めているんですよあれは」 「おお、そうか」  なるほど、あることないこと報告されたくなければ袖の下を渡せと。ふむ。 「いや、これは気づかなかった、すまないそういうことに慣れていないものでな」 「まあ、田舎者では仕方あるまい」
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