三国志島介の志編(180年代

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 歪んだ表情で早く出すものを出せと要求して来る。言葉にはしないが、そういうことなんだろ? 焼き豚が載った皿を持ってこさせて「焼きたてだ、美味いぞ」それと知りつつ差し出してやる。皿を片手で跳ねのけると、見事に転がって行った。肉が勿体ないな。 「どうやら己の身が可愛くはないらしい! 覚えて置け!」  変な捨て台詞だよ、どの面さげて賄賂を要求してきてるんやら。 「島殿!」 「捨て置け、あんなのとは関わり合いたくない」  といってもあちらから絡んで来るんだろうがね! 秋も深まり冬になる頃、それは起こった。西陵にやって来た詰問使が州府へ出頭するようにと命令をしてきた。内容は不正利得と収賄らしい。 ◇  人物を見誤っていたか。華容の牢獄で正座をして目を閉じている。監禁をされてはいるが、それ以上の罰があるわけでもない。獄に下り丸々二か月が経とうとしていた、牢番がこっそりと食事を多めに持って来てくれているので、体力が落ちることは無かった。  外に出て運動をすることは自由にさせて貰えたし、来客があれば会って話すことも出来た。禁固刑のようなものだろうか。年が改まって光和七年、そろそろだな。    面会に来た文聘が真剣な面持ちで対面に座る。 「荊州で戦乱が起こりました」 「黄巾賊が大発生したか」  今年だからな、始まりは春かと思ったが、冬の終わりだったか。まだ各地で連携が取れないうちに仕掛けたってことか? 「張角が天公将軍を名乗り、全土で武装蜂起をしております。荊州では南陽郡がその騒乱の中心に」
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