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「そう言われたら引退して泰山にでも行くさ。仮にそうするにしても直ぐじゃないだろ、董卓にはしなければならないことが山ほどあるからな」
面倒は後回しで地盤固めを最優先する。発言力の裏付けは軍事力だ、宮廷内の兵力と、城外の兵力を手中にするのに忙しかろう。何者かが近づいてくるぞ。荀彧もそれに気づいたようですっと身を引いて居場所を改める。
「旦那様、お客様です――」
そういう下僕のすぐ後ろから姿を現して、下僕を押しのけると部屋に入って来る。ふむ、見覚えは無いが。文官服で線が細い中年、誰だこいつは。
「黄門侍郎の崔景である。島恭荻将軍へ何皇太后陛下のお言葉を伝える」
荀彧に目配せを受けたので、その場から下座へと動いて膝を折って言葉を賜る姿勢をとった。皇帝と同等の敬意を示す必要がある人物だ、その人となりなどは関係ない。
「本日陽が暮れる刻、怜宣宮に出頭せよ。返答は如何」
「謹んで拝命致します」
言うだけ言うとそいつはさっさと出て行ってしまう、忙しい奴だな。下僕を下がらせて荀彧と目を合わせる。
「次の用事があるのかねあいつも」
軽い冗談を挟みつつ、用事があるから俺を呼ぶわけだからその内容について考えを巡らせるとしよう。
「宮内の近衛を指揮する者を集めるつもりではないでしょうか?」
「ふむ。すると曹操や袁術なんかもだったか」
五校尉の名前を挙げろと言われても俺は覚えてないぞ。こいつは知ってそうだが、夜に逃げ出そうとしてる奴は応じることはないだろうな。そしてそんなのを招集してどうするつもりやら。
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