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「恐らくは。董卓派と確定している者には接触せずとも、直ぐに情報は伝わるでしょう。これはよろしくありません」
美男子が眉をよせてしかめつらをしても絵になるんだよな、荀彧は俺の知る中で一番整った顔をしているぞ。苦笑しつつ情報漏れに対する董卓の行動を想像してみた。
「……官職というのは司空の独断でそうも簡単に任免可能なものなのか?」
誰か一人の思惑で何でもかんでも進められるなら、色々とこちらが動いても無駄にしかならんだろ。
「本来は三公九卿がそれぞれ司る職位の者らを推挙し、それを承認し、皇帝陛下が任免するもので御座います。三公とは良識ある人物が就き、上公は陛下の師らが決断を輔弼する役目。司空董卓以外が朝廷に無く、均衡が崩れているのは事実であります」
皇帝の人事権は絶対だが、その指名を持って来るのが司空だけってことか。
「董卓が不在の時に皇帝が決めたらどうなる?」
「遅れて司空の耳に入り、速やかに撤回されるなりするでしょう。内宮に身を置いて董卓はその権勢を強めることに集中しておりますので、隙を衝くのは極めて困難かと」
なるほど、司空に就任したことの色々な側面が見えて来たぞ。司徒になればどこかの誰かを下につけるということで、席次が埋まる恐れがあったんだろう。だが司空になるといえば司徒を差し込むのは難しい、その数日を大いに利用しようという腹だったのか。
「悪知恵が働く男だな。しかしよそ者が突然やって来て、水も漏らさぬ仕置きを出来るほど宮廷も甘くはないだろう」
事実皇太后が動いている、それに俺に聞こえないだけで別の誰かもどうせどこかで動いている。
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