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「暴君と言うのは歴史上にも度々現れます。それらには共通点が御座います」
「共通点?」
「躊躇をせずに敵対者を葬ることです。恐怖により統治を行うことを許容することで、あらゆる制約を無視する凶行」
うーむ、確かに出合い頭に武器を振るわれたら多くの者は無事ではいられん。それを批判する者は一族惨殺、密告を良しとして追従するものだけを引き上げれば……か。確かにその通りなんだよ董卓ってやつは、荀彧は今の時点でそこまで読み切っているわけか、逸材だよ何のお世辞も無しにな。
「荀彧に命令だ。お前を含めてすべての幕僚は最低でも常に五人の護衛をつけて歩くんだ」
「畏まりまして。敵を警戒するのですね」
「いやそれは違うぞ」
即座に否定すると荀彧が怪訝な顔をした。だが答えは決まっていた。
「味方ではない者を警戒するんだ。用いるのは信用出来る者だけ、それ以外は全てを疑ってかかれ」
「不合理で、不可思議で、不条理なことではありますが、我が君の言葉が正しいのだろうと理解をしております」
深々と頭を垂れて受け入れる。己が甘かったと改めることが出来る機会があったのは幸運だ。ここは既に戦場だぞ、それも災厄の中心の。敵と近すぎるのはやりづらい、まあお互い様だろうがね。
「では宮に向かうとするか、日暮れなどと言っているが首を長くして待っているんだろからな」
◇
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