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腕が立つ男達を五人を舎人と呼ばれる将軍府の属吏から選んで連れて行く。荀彧に厳命したのに自分が無視では示しがつかんからな。見るからに屈強な戦士が四人と、素早さと警戒心で生き抜いてきただろう歴年者が一人だ。黒兵からの指名者で、どうやら羽長官の護衛をしていたらしい。
荀彧も別途五人を引き連れて斜め後ろを歩いている。こちらは郷土兵からの選抜で、若君みたいな呼び声が混ざったりもしている。いわゆる郎党というのだろう。
黄色の門がある一つ手前の宮にやって来る。黄門は皇族の住む宮が黄色く塗られていたことに由来する、つまりは後宮というやつだ、そこへは皇帝以外の男は未成年の皇族しか立ち入れない、或いは宦官だ。
どれだけ来ているかと思えばまばらだな、こいつはどういうことだ? 曹操や袁紹、袁術どころか顔を知っているような奴が全然居ないぞ。いや……一人居るな。
「盧植殿、また会いましたね」
「ふむ、島殿に荀彧殿か」
巨人の姿があった、確か尚書だったな。皇帝への上奏文の取り扱いで、政務補佐官のようなイメージだ。こいつのことだから、皇太后に呼ばれたから来たというスタンスなんだろう、良し悪しじゃなさそうだ。
「詳しくはないんですが、もっと居るんだろうと思っていましたよ」
あたりを見回して少ないと指摘する。盧植は顎髭を撫でて顔を見渡すと目を閉じた。
「皇族への忠義が蔑ろにされているのが嘆かわしい。董卓が怖いのであろう」
「まあそうでしょう。異民族らでも恐怖するあの董卓です、顔を見ればすくみ上る、それを責めることは酷と言うもの」
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