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「ではきっとあなたが私の知る李儒殿なのでしょう。もし差し支えなければ、時を見計らい一献いかがでしょう」
「私をお誘いで? それはそれは、どうもご丁寧に。このような非才非学の徒でよろしければ、いつでもお声がけ下さいませ。しかし何故でしょう」
荀彧は何も言わないが、同じく理由を聞きたそうな雰囲気をしているな。
「李儒殿といえば文武に聡く、知恵が深いお方と聞き及んでおります。是非教えを乞いたく」
「この私がそのように言われるとは珍しいですな。ははははは、喜んでお付き合いいたしましょう」
拱手すると畏まる。ん、あれは宦官だな、いよいよ皇太后のお出ましか。宮の中央に集まって整列して降臨を待つとしよう。
仰々しいまでの衣を羽織った女性、まだ二十代か? 少帝の歳を考えてみて、この時代を鑑みれば不思議ではないくらいだ。何苗将軍と目元が似ているな。集まっている男達を見て何を思っているか、まあ少ないと焦っていたりはするかもな。
「そなたらに来てもらったのは他でもない、董卓が幅を利かせているのを掣肘するためじゃ。あやつは皇帝を蔑ろにし、漢の正統を乱す存在、これを外す為に働いてもらう」
やる気十分だが、こちらの意図は無視ってわけか。何進や何苗が居た時はそれでも良かったかもしれんが、今はそれで通用するかな。この場の官らは微妙な表情だぞ。
皇太后が宦官へ片手を伸ばすと、盆を持った者がそろそろと近寄り差し出す。
「上手く事を運んだものは列侯へと封じるよう手筈を整えてやろう」
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