三国志島介の志編(180年代

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「浅慮の極みを誇ろうとする愚か者は頭を冷やして来るが良い。連れていけ」  ふむ、無能者の足きりと言うわけか、存外現実を知っているらしいな。残った我等を見てにやりと笑う。こいつは悪女というやつだぞ、真っ新綺麗な奴が宮廷で生き残れるとも思っていないがね。 「さて、中散大夫李儒よ、お前はなぜ提言し進み出なかったのだ」  注目を集めるが李儒は動じることもない。やはり俺の知っているあの李儒ってことでいいんだよな? 「策とは、これと解っていても避けられぬものを申します。見破られたうえでどうとでも対処可能なものと心中する程暇ではありませんので」  いうじゃないか、確かに解ってもどうしよもない策はある。取引のようなもので、互いに損得が絡んだりするのもがそれだ。一方的に嵌めようとするのは、かなりの差が必要になってくるぞ。 「多少は使えそうだな。盧植は何故だ」 「否を突き付けるならば正面から堂々とすべきでしょう。私は誰に憚ることなく正道を行きます」  こいつはこいつで良いな。やはり文官ではなく武官向きの性格だろ。先の黄巾の乱の時には紆余曲折あったようだが、有能だろうことがうかがい知れる。出来れば単独で使わない方が良い奴ではあるがね。  ぐるりとあたりを見回して、皇太后がこちらをじっと睨んで来る。 「お前は……兄のところに居た配下だったな」 「恭荻将軍歩兵校尉島介と申します。これといって用事がないならばお暇したく存じますが」  若干ぶっきらぼうな感じで言い放つと、宦官らが怒りの視線をぶつけてくる。案山子に睨まれても何とも思わんよ。 「董卓は共通の敵と思っているが」
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