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「地図はあるか?」
「用意いたします」
毛皮に墨で掛かれた地図。中国のシルエットを思い浮かべ、左下あたりにあたるらしいのを確認した。
「蜀の領域がここで、東が呉、北が魏でございます」
「南や西は?」
「西は遥か先に大月氏、南は未開の南蛮でして」
南蛮か、どうなんだろうな。地図では随分と近くに感じられるが、山あり谷ありで苦労するはずだ。
図上では指で計れるような距離でも、歩いていけば数か月か。
「南蛮の民は居ないか?」
「府内に数名が」
「会うことは?」
「ご所望とあらば」
「では手配してくれ」
いうだけで何でもこなしてくれる、ありがたくて涙が出るよ。
願いは翌日に叶えられた。四人が並んでいる。皆がそうなのか、顔つきは似ていた。
「具芭苑が南蛮のものです」
「他は?」
「通訳でして。間に三人入らねば言葉が通じません」
「参ったな!」
そんなに間に挟むと正確さに欠けるぞ。最悪全く違う内容になって来る。
伝言ゲームというのと同じで、受け取り側と発信する側で解釈がずれていくものだ。
「具芭苑に南蛮の概要を説明させるんだ」
端から順に隣に話しかけて行く。全く言葉が理解できない。
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