三国志蜀の中原制覇編(220年代

471/1235
前へ
/2636ページ
次へ
 すると列の後ろから随分と若く線が細い男が進み出た。文官を絵にかいたような優男。 「某が郤正、雲南書曹で御座います」  まだ子供じゃないか、いや栄養不良で身体が小さいのか? 「なぜ主簿が獄に落とされたかを述べてみよ」  どういう人物か試しに聞いてみるとしよう。僻地に飛ばされたのか、或いは志願したものか。 「班主簿は三つの罪を犯されました。一つは決定事項への不服従、一つは代案なき批判、一つは己が態度への無責任でございます」  慈悲を乞うのも罪ときたか。だが自身の意があったなら、胸を張って獄に降るくらいはするだろうな。 「ならばお前ならどうする」 「我と一旒の旗さえあれば、将軍のお望みを叶えてみせましょう」  堂々と考えを述べるな、若いのに感心なことだ。並み居るやつらも声をあげんとは、案山子がいくらいても役にたたん。 「郤正を使者に任じる、好きな旗を持っていけ」 「お言葉通りに」  ゆったりと礼をすると慌てず急がずに出て行く。大物とまでは言わんが、品行方正な役割を与えれば満足いくだろうな。南蛮に来たのはそのあたりに自身の適性があると知ってのことか?  残る案山子は単純作業要員だな、ま、仕方あるまい。
/2636ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3370人が本棚に入れています
本棚に追加