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「島右将軍の援兵、ありがたく」
多少咳込みながら両手を前に出して歓迎の意を示した。無理をしているんだろうな、休ませてやろう。
「出迎えご苦労だ。詳しい話は中でするぞ」
そう言ってやりすぐさま内城へと進む、ここでも騎乗したままで構わないが、張裔と小声で話をするために下馬した。
気を使って供回りが少しばかり離れて歩く。
「張太守、加減が優れないと聞いたが」
「面目御座いませぬ。歳でしょうか、起きているのも苦労する始末」
やはりそうか、ここで倒れられてはこちらが困る。
「城に入ったら横になって欲しい。話はそこで、これは俺の命令だ」
驚いた表情を見せた後に「お言葉通りに」一礼して咳込む。恐らく長くは無いんだろうな、出来れば戦が終わるまでは小康状態を保ってもらいたい。
内城に入ると直ぐに寝室へと向かう。力なく横たわると一息ついた。
「情けない恰好で失礼いたします」
「養生するのは国家の為だ、何一つ後ろめたいことなど無い。漢中を維持できているのは称賛されて然るべきだと俺が認める」
大軍と戦い陥落していない、それだけで充分な働きだ。太守の役目を果たしているし、これだけの敵を引き付けているんだ、文句などない。
「ありがたく」
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