三国志蜀の中原制覇編(220年代

691/1235
前へ
/2615ページ
次へ
「総員俺に続け!」  互いが背を向けて東西の蜀軍を防いでいる箇所に、北側から突っ込む。左右から親衛兵がせり出して周りを囲んで魏兵に切り込んだ。  ぐいぐいと隙間をこじ開けて行き、突き抜けた一隊が魏兵の背を切って回ると一気に崩壊を起こす。 「伝令だ、姜維に趙雲への増援を命じろ」  戦場のバランスは一度崩れたらそう簡単には元に戻らない。一旦離脱して態勢を立て直す、張遼に出来るのは傷を浅くして退くことのみ、目的はもう果たしている。  姜維軍が抜けた空間に張遼軍が走った。こうなることは予想済みだ、多くは望まんよ。 「敵軍が撤退していきます!」  見たら解ることでも報告をあげるのが役目の者が声を出す。魏延の軍も山の手前で足を止めた、本陣に李項の軍も合流。西を見ると姜維が韓徳軍の背を攻めて、趙雲と挟撃、これを蹴散らしていた。  終わったな。戦後処理をするために長安に暫く滞在する必要がある、永安方面の確認もしておくとするか。主軍が引き下がって行ったんだ、すぐに撤退するだろうがな。 「ご領主様、我等の勝利です」 「ああ、勝ったようだな。失った者を数えるより今は勝利を祝おう。生きている奴らをこそ大切にするんだ」  首都へ伝令を送った。成都では蜀軍勝利の報に大いに沸いた、奇跡が起きていると天を仰ぐ者が多かったと後に耳にする。  これだけ大勝利をして領土を奪っても、まだ魏の方が遥かに国力が上だってのが現実だ。呉と合わせてもまだ魏が上だろうな、やれやれだ。
/2615ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3364人が本棚に入れています
本棚に追加