三国志蜀の中原制覇編(220年代

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 巨大な両開きの扉、衛兵が二人で片方ずつの扉を引っ張った。視界に広がる煌びやかな装飾の部屋、左右には文武百官が居並び、こちらを注目している。  中央の赤い絨毯は真っすぐ奥へと伸びていて、階段の上には孔明先生が立っていた。玉座には皇帝が鎮座している。御前という奴だ。  武官列に北軍五校尉の姿が見えるが、張裔は居ない。漢中の防衛戦を乗り切った後に世を去った。戦中だけは何とか気力で命を繋いでいたんだろう、立派な男だった。  同じく趙雲、あいつも世を去った。韓徳軍の激しい攻めで、漢中北西の野戦陣で受けた傷が悪化、高齢だったせいもあり戦病死に至った。大きな損失だよ。  絨毯のど真ん中をゆっくりと時間をかけて歩く。憧れ、怨嗟、畏敬、恐怖、妬み、さまざまな感情が突き刺さって来るのを感じる。慣れっこだよ、俺はどこまで行っても俺だからな。 「島介、戦陣よりただ今帰着いたしました!」  衣を跳ねて片膝をついて段下で皇帝に頭を垂れる。それにならって幕下の武将らも同時に拝礼した。居並ぶ文武百官にも見劣りはしないぞ、現場でのたたき上げを揃えたんだからな。
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