3327人が本棚に入れています
本棚に追加
/2524ページ
巨大な両開きの扉、衛兵が二人で片方ずつの扉を引っ張った。視界に広がる煌びやかな装飾の部屋、左右には文武百官が居並び、こちらを注目している。
中央の赤い絨毯は真っすぐ奥へと伸びていて、階段の上には孔明先生が立っていた。玉座には皇帝が鎮座している。御前という奴だ。
武官列に北軍五校尉の姿が見えるが、張裔は居ない。漢中の防衛戦を乗り切った後に世を去った。戦中だけは何とか気力で命を繋いでいたんだろう、立派な男だった。
同じく趙雲、あいつも世を去った。韓徳軍の激しい攻めで、漢中北西の野戦陣で受けた傷が悪化、高齢だったせいもあり戦病死に至った。大きな損失だよ。
絨毯のど真ん中をゆっくりと時間をかけて歩く。憧れ、怨嗟、畏敬、恐怖、妬み、さまざまな感情が突き刺さって来るのを感じる。慣れっこだよ、俺はどこまで行っても俺だからな。
「島介、戦陣よりただ今帰着いたしました!」
衣を跳ねて片膝をついて段下で皇帝に頭を垂れる。それにならって幕下の武将らも同時に拝礼した。居並ぶ文武百官にも見劣りはしないぞ、現場でのたたき上げを揃えたんだからな。
最初のコメントを投稿しよう!