三国志蜀の中原制覇編(220年代

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◇  成都を出て途中、針路を徐に変更する。誰一人として何故とは問わなかった、何せ先頭を行くのが大将軍の本営だから。即ちそれが俺の意志だってことだからな。  黒毛の体格が良い軍馬の背で懐かしの中城を見詰める。あちこちに戦争の傷跡が残っているのが痛々しくもあり、誇らしげでもある。  城壁になびいている軍旗はあまりにもなじみが深いものばかり。軍勢が側によると城門が開かれて軍兵が道の左右に分かれて整列する。開かれた門の前には白髪白髭の老人。 「ご領主様のご帰還、感慨の極みで御座います」  李長老が大勢の文武官を従えて出迎えた。表情は最初に会ったころとは違って堂々としてすっきりとした笑顔。もういつ死んでも満足だと言うのが伝わるようだった。 「俺が帰る場所をよく守ってくれた、礼を言わせてもらう」  反逆を問われた時に無血開城をしていれば、死なずに済んだものがどれだけ居たやら。千や二千ではないはずだ。 「滅相もございません。ここはご領主様の王国にございますれば、どうぞご懸念なく。こちらに一席ご用意させていただきました、是非ともご降臨くださいますよう」
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