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「輔漢号は遥かに格式がある号。それに蜀へ高定が侵入した際には私が防ぎました。いかに島護忠将軍が丞相の友人であろうと、国家の伝統を蔑ろには出来ますまい」
見下すわけではない、序列を知れと説いているだけだ。それについては俺とて理解している。
無名の新人に席次を奪われて納得いっていない、理由はそれだけで充分。
「なるほど伝統は大切だ。しかし私は命を遂行しなければならぬ。その為には指揮権をことごとく掌握することが必須だ」
土壇場で従わないような軍は要らん。首都でなんと言って来ようと俺は絶対に認めん。
「私とて理解しております。だから形だけでも幕に加わると申しておる次第」
呉長史が少しばかり不安を見せる。しかし口を挟んではいけないと見守った。
「将軍を必要としているのは認める。だが私は同格を認めるわけにはいかない。選べ、指揮権を侵さぬと明言し幕に列なるか、首都に帰還するかだ」
政権から離れた将軍は全てを司り、唯一責務を負う。俺が納得しないやつなど十万の軍を率いていようと受け入れるものか!
李厳はまさかの頑強な抵抗にあい窮した。普通ならば名目などいくらでも目を瞑るというのに、この新参者はやけにいきり立つと。
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