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《首都の朝議にて》
首都である成都城の中央で論功行賞がなされた。
通常ならば一番戦功から下ってゆくのだが、今回はいつもとは違い二番以下から評されていく。主だったものが全て名を呼ばれ恩賞が与えられた、呼ばれていないのは孔明のみ。
自身のことなので最後にまわしたか、或いは省いたのだろうと皆が思っている。
だが皇帝の御前、皆が等しく驚愕する。功績一番が何故か島介だったからだ。当然百官が反発する。
「丞相に申し上げます。何故かような者が首座になるのでありましょうか」
「島将軍は南蛮にあって漢中に一歩も踏み入っておりませぬぞ!」
「僭越ながら、丞相はご友人に甘いのではありますまいか」
歯に衣着せぬ物言いがつく。全てもっともな言であり、妬みや誹謗中傷のみというのは無かった。
ある程度不満を吐き出させて後に羽毛の扇子を前に突き出し鎮まるようにと仕草で示す。
「島将軍は遠く雲南にあり、漢中に足りぬ糧食を運び、巴東で呉軍を退け、魏軍より首都を救った」
一つ一つ詳細を時系列と共に述べて行き、事実を明らかにしていく。そこに一切の私情は挟まず、あったことのみを正確に知らしめる。
「百官に尋ねたい、もしこれよりも功ありと言うものが居たら名乗り出て欲しい」
一人ひとり目を合わせ段上より尋ねるが、誰一人としてうつ向いた顔を上げることは無かった。
島を抜きにして首都で式典が進む。増援に出た軍勢は役目を果たすと速やかに引き揚げてしまい、元の駐屯地で解散してしまっている。
丞相の同盟者、友人、異国の将軍。島とは一体何者なのか、様々な憶測が飛び交った。だがそこには居ない島を話題にするのも、暫くすると収まってしまう。
劉備が死去し、国が揺れた後の勝ち戦。皇帝が代替わりしてもやれるぞ、そんな気持ちになれたので雨降って地固まる、まさにこうだった。
驚きはそれだけではなく、島の離反を懸念した文官が皇帝の縁続きを妻にしてしまえと取り込みをはかりだした。孔明もそうすれば反発が少なくなると、やはり島に黙って全て進めてしまうのだった。
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