零章 「ダンジョン」

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「い、医療を専門にしてます、あ、アヤカゼと申します…今回はダンジョン内部での治療及び試験薬のテストをしたいと思ってます」 「そして、私が彼らのリーダーとなります。アレックスです!」 主に日本人だが、リーダーだけ外人という奇妙な面子だ。 「それでは…あーよろしく。それでは、明日明朝に出立したいと思います。かいさーん!」 ジーンはいやいや解散させる。 その理由は定かではないが、明らかに彼らを嫌っていた。 解散の号令と共に皆席を立っていく。 そこに取り残された政府の関係者たち。 「ちっ!なんだこの調査団は客人の持て成し方がなってねぇじゃねぇか!」 「まぁまぁ、調査団っていうのは外部の人間、とくに政府の関係者となるとあまり受け入れてくれないものさ」 「たしかに。先日政府関係者がダンジョンの研究論文を同行していた調査団の方が早く出したはずが、関係者側が出したことになっていることがあったしな、警戒するのも当然だろう」 政府側から派遣された調査員はバックに政府が付いているせいか、調査団は基本的に権力が弱い。 故に研究論文を早く出そうが、政府の圧力でもみ消されてしまうのだ。 それに、関係者側が調査員がフレンドリーファイアを起こした場合、その罪は問われることはなく。 調査団員側は単独での怪我として扱われる。 このことによく思わない者は多く、政府の関係者であることを酷く毛嫌うことがほとんどだ。 一行はやれやれと言わんばかりにテントをあとにした。 翌朝。 季節は秋により、肌寒い中、浪漫を求める多くの冒険者はその意気揚々とした瞳を輝かせていた。 「今日はアイツらか…」 「あーあ、可哀想に…」 「政府のバカ共も懲りねぇなぁ」 ジーンたち一行が早起きな他調査団の者達に騒がれながら、ダンジョン入口であるダンジョン直下の時計塔に向かう。 ダンジョン内部への行き方はダンジョンから日に1度落ちるエレベーターのような役割を持った箱である。 ダンジョンと呼ばれるそれは黒いキューブ型の物体だ。 ダンジョンの一部でも取れたかのようにゆっくりと地上に降り立つそれは、多くの調査団からこう呼ばれた。
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