零章 「ダンジョン」

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『天からの棺桶』。 その箱に乗ったものは二度と帰らぬと恐れられていた。 だが、それはあくまでもダンジョンを夢見ぬ者達への恐怖感を煽るだけの妄言だ。 本当の意味を。 「『天の誘い(ヘブンズ・アセンド)』。この誘いに一度でも乗ってしまうと、その心は二度と地上へは帰らない…それほど、ダンジョンっていうのはどうしようもなく人を魅了してしまうっていうことだ」 ジーンが、降りてくるキューブを見ておもむろに説明し出す。 「なお、酔い止めは早めにどうぞ」 彼はすぐさまポケットから酔い止めの薬を取り出して飲み込んだ。 「こんなんで酔うんですか!?」 シラギリが小言を言うとカエデが彼をどつく。 「ったく!隊長はこの世には珍しいヘブンズ・アセンド酔い持ちのお方なんだ。もっと気を遣え!」 「す、すみません…」 先輩に注意され、凹む後輩。 なんとも初々しい二人である。 キューブが完全に地上に接地されると、キューブに突如入口が出現する。 割れ目ができ、そこから妙な機械音と共に開かれたキューブの中は、高級ホテルをも思わせる豪華な造りの部屋。 ダンジョン前の待合室とでも言うべきか。 本棚やベッド、ソファに紅茶セット。 人々に恐れられるダンジョンというものとはだいぶかけ離れた空間がそこにはあった。 「さーて、こっから2,3時間掛かるからその間に新参者は注意事項を言っておく。その他のモノは各自くつろいでよし!」 ジーンのその一言を聞いて各人持ち場について行く。 フカフカのソファで沈みこんで座る者、湯を沸かして茶会を開こうとする者、ベッドにダイブして寝に入る者。 今から調査に向かう者達とは思えぬほどの自由さを発揮した。 「クロノス氏と政府の皆さんはこっちの席へ」 茶会のテーブルとは別にある応接用に向き合う形で配置されたソファの場所へと案内される。 ジーンが座るとむかえに政府関係者たちのリーダーアレックスが代表するような形で座る。
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