零章 「ダンジョン」

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最後の言葉は語調を強めて言った。 クロノスは眉を歪ませながら聞いていたが、政府関係者たちは鼻で笑いながら軽く受け止めていた。 「ははは!大丈夫ですよジーンさん。うちの者たちは非常に優秀ですからね。いざって時はジーンさんたち調査団の力になれるはずです!心配ご無用ですよ!ははは!」 アレックスは自信ありげに言う。 そんな彼を見てか不快そうにタバコを灰皿に押し潰して消火したジーン。 「くれぐれも『自分の命は自分で守ってください。』僕達は助けられませんので」 そう言い残し、仲間の元へと去っていく。 「ちっ、なんだアイツの言い方はよ!俺らは政府ってバックがあるってのに無責任な奴だ!」 「まぁまぁ落ち着きたまえよ。彼は危険だからその覚悟はあるかと俺たちに訪ねてくれたのさ!そうかっかしなさんな」 仲間の一人をなだめるアレックス、それを見てか不快そうにこの場を去るクロノス。 「ふん…雑魚共が…」 言い放つように去るとまたしても政府関係者の一人が噛みついてくるが、彼は無視してその場から離れていく。 ダンジョンまではまだ2,3時間ある。 その間に彼らは今一時のパーソナルタイムを楽しんでいる。 ジーンは一人、一人用のフカフカなソファに腰掛ける天井を仰ぎながらタバコを嗜んでいた。 部屋が急に揺れると入ってきた入口が開かれる。 その入口の奥はどこまでも続いていそうな闇が見えた。 「さぁ、ダンジョンだ。どうやら最初は真っ暗な様だ。とりあえず、灯りは付けないように慎重に行こう。武装は最低限の物でいい。政府の方々は僕達の後を付いてきてください」 ジーンが全員に号令を掛けると、調査団員たちは隊列を組んで先に出る。 ふと、黒人の大男であるウォッチがクロノスを手招く。 「おめぇさんはコッチだ。あと、俺はウォッチだおめぇさんは俺と行動ってことでよろしくな」 「ふん…まぁ死ぬまでの間よろしく頼む」 「ネガティブなこと言ってると、女の子にモテないぞ」 気前よく笑う強面。 「さっ、行こう」 ジーンはダンジョンの闇を見つめて静かに促した。
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