零章 「ダンジョン」

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応接間に向かうとそこにいたのは全員スーツ姿のどこぞの大企業のサラリーマンかと思う形相の者達が用意された席に座っていた。 「君が僕達に同行してくれる『才能者(アビリティズ)』の方かな?」 アビリティズ、ダンジョンの出現により魔法のような能力を使えるようになってしまった人間の呼称である。 ダンジョンが出現する前まではただの人間であった彼らは出現してから急にその身に能力を宿してしまった。 人間がダンジョン攻略するために『備わった才能』、それが『アビリティ』。 アビリティを持っている人間たちを『アビリティズ』と人々は呼称した。 「ああ…お前らと死に行く者だ」 青年の発言に顔を歪める一同だが、ボサボサな金髪頭の男が愉快そうに笑った。 「ははは!死にに行くか?いいじゃないか。だが、僕達と付いて行くというのなら死ぬのは諦めた方がいい。なぜなら…僕達はダンジョンを攻略しに行くのだからな!」 青年は金髪の言ったことがまるで夢を見る人間のことだと嘲笑した。 ダンジョンは攻略される度に消え、世界のどこかにまた現れる。 攻略される度に新しくなり、より難しくなって行く。 それを「攻略していく」などというのは少年が描く夢のように儚くも途方もないことなのだ。 「そうそう、自己紹介がまだだったね。僕はジーン。ジーン・オルケン。この調査団の団長をやってる」 ジーンが名乗ると彼の右隣の席の女性が立ち上がる。 「はじめまして。医療係(メディック)の立花 時子です」 黒髪の日本人女性で手には白手袋をしている。 メディックとあるからして、恐らく手袋をはめてないといけないのだろう。 それから時計回りに次々と名乗っていった。 「俺はウォッチ、団長補佐だ」 黒人の大男、その佇まいから幾つもの戦場を生き抜いてきたオーラが滲み出ている。 団長補佐ということもあり、かなりの実力者であることはたしかだ。 「次はあたしね~♪荷物係ダニエル・バークマン。ダニーちゃんって呼んでねぇ?」 女っぽい喋り方をするが、彼は男だ。 筋肉ムキムキのオネェだ。
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