零章 「ダンジョン」

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キャンプ、ダンジョン攻略のために各国から調査団が群れを連ねて集まってできた仮設テントの群れ。 その至るところから違った言語が飛び交い、屈強な調査団たちがこぞって、その浪漫を求める瞳を輝かせている。 「ここが、キャンプ。だいたいの調査団は一度ダンジョンに入る前にこうやって仮設で建て、そこで情報の交換やら仲間の募集を行う。あとは各国の要人が様子見にきたりとまぁ突入前の一大地点というわけだ」 ジーンがおもむろにクロノスに説明する。 今回のダンジョン出現ポイントはロンドン。 かの有名な時計塔の真上である。 キャンプは時計塔の下を通る道路を塞ぐように群生していた。 「あ!隊長ー!こっちこっちー!」 一行が先に設置していたテントに向かっているとそのテントからひょっこり顔を出し手を振っている赤髪の女。 「クロノス氏。彼女はうちの戦闘係でカエデという」 「遅いぞ!隊長!新人が訓練で逆上せちまったよ!」 テントから駆け足で寄ってくる、その手には木刀が握られている。 「カエデ、こちらクロノス氏。我が団のアビリティズ戦力として引っ張ってきた」 「おっす!あたしはカエデ!戦闘係で主に前線に立ってモンスターを駆逐してるぜ!」 「…クロノスだ」 握手を求められそれに応じる。 見た目格好口調から男ではあるが、胸と尻の女性らしい膨らみと華奢な体躯は明らかに女性である。 「せ、せんぱぁい…自分だけテントにいるとか…ずるいですよぉ」 「あたしは別にいいんだよ!もう10週してこい!」 「なんでですか!?」 どこからともなく走り込みから帰ってきたであろう新人と呼ばれる少年。 疲れきった顔で必死に抗議しているとクロノスを見付けて我に帰る。 「す、すみません!」 「新人くん彼はクロノス氏だ」 「マカベ・シラギリです!よろしくお願いします!」 頭を深々と下げ挨拶する。 「…よろしく頼む」 会釈をしてテントへと向かう。
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