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もう一度、ゴメスンは先ほど自分が座っていた場所へと腰を降ろしてため息をついた。
「では……これは私が開封してもよろしいので?」
「いいから早くしてくれよ。もうすぐ賭場が始まんだよ」
「失礼します」
近衛の1人が封蝋を丁寧に割ると、丸まった書簡を開いた。
「ゴメスン殿
ソナタが勇者であることは、使いのものから聞き、既にご承知の通りであると思われる」
「承知してねぇけどな」
「ゴホン……身支度などの準備は国の方で準備させていただいた。勇者の心得についてもご説明させていただく。ついては王様より直々にお話があるゆえ、本日中に城へ顔を出されたし。
王 メリクルス 代筆 王宮専属魔導師長 グルヒィリップ」
「そうか。……それだけか? はいはい、良くできました、おめでとさん」
話を聞き終えたゴメスンが立ち上がり馬車から出ようとする。
「お、お待ち下さいゴメスン様!」
「もういいだろ? 手の込んだ嘘なのはわかってるから。なんだかしつこいし面倒なやつらだな」
「では、どうしても来ていただけない場合に渡すようにと言われたものが……」
「なんだその袋。毒か?」
茶色い巾着を取り出し、近衛がゴメスンへ差し出した。
両手にすっぽりとハマる大きさだが、中に入っているものは質量が高いようで巾着が下へ引っ張られているのがわかった。
ゴメスンは受けとると、先ほど毒と疑っていたにも関わらず無造作に開けて中身を覗いた。
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