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「……マジですかい? そりゃ、まあ、なんですな。この辺りの顔じゃなかったんですかい?」
「ああ、知らねぇ顔だ。本物か……もしくは余所者の詐欺集団だろうな。余所者で間違いはないんだろうが、宝刀を持ち出しやがっただけじゃなくてな、王より直々の手紙を持ってやがったんだぜ」
俺が読んだわけじゃないがな、と呟くと、店主が忙しさのあまり無造作に置かれた酒の中身がこぼれないように慌てた様子でコップを掴んでいる。
「そいで、金は? これだけ大勢に奢るとなると……銀貨にして5枚から、下手すると10枚近くいきますぜ?」
奢りだということで食いきれない量の食い物を頼む輩を横目にナグロフはため息を吐いた。
ゴメスンが懐から金貨を1枚取り出してテーブルの上に置いた。
「ちょ、ちょ、ちょ、な、なにしてるんですかい!? 皆に見られますぜ!?」
「落ち着け。これだけ人が集まるれば逆に誰にも見られねぇもんなんだよ。お前が慌てたら人がみるだろうが」
ナグロフは深呼吸を繰返し、自らの果実酒と炭酸で割った酒を一気にあおる。
「こ、こいつぁ、驚きましたぜ。このナグロフ、本物なんか一生見ることができないと思ってやした」
「それは俺もだよ。近衛兵を名乗る輩が金を渡してきやがった」
「お、おお! なるほど。そういうことですかい」
辺りの人だかりがさらに増えてきたようで、店内の気温が上がってきたのが肌ですら感じられる程である。
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