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「この男が、勇者……なのか?」
「間違いございません」
王宮の一室。
金、白、赤。
突然この部屋に入れられた人間がいたとしたら、まずそういった印象を持つだろう。
金縁の絵画が高い天井で寂しい壁を飾る部屋で、金色輝く王冠を付けた少し太った初老の男が水晶玉のようなものを覗き込んでいる。
玉には一人の男の顔が出ている。
鳥の巣を頭に置いているかのようなボサボサの髪。
生えた髭は整えられておらず、数日剃っていないのが遠くからでもわかるほどだ。
隣に出っ歯の男が歩いている。
「ちなみに……その……どっちじゃ? 勇者」
「こちらの、髪が……その……不思議な方でございます」
「そ、そうか。ご苦労じゃった。誰かはわかったのか?」
「ええ、既に使いの者が向かっております」
玉の前に座る紫色のローブを身に付けた男が、玉を覗く初老の男の顔色を常に伺うように表情を上目使いに見ている。
「……もう一度だけ、 すまぬが確認させてくれ。間違いは……ないな?」
「はい。確実に彼の者が勇者にございます」
「……わかった。もう二度と聞かぬゆえ、疑ったことを許すがよい」
「私のような者に謝罪など、恐れ多い事でございます」
椅子から立ち上がったローブの男が床にひれ伏し、初老の男は玉をもう一度覗くと顔を手で覆ったまま首を横へ振った。
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