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「いえ、そのタリスマンの件ではございません。もっと重要な案件で伺っております」
「そ、そうなの? なんだ、良かった。どこ行けばいいの? 俺の家で聞こうか?」
近衛兵はいまだにその辺りに走り回る虫を見て、軽く身震いしている。
「い、いえ。言いにくいのですが、ゴメスン様の家の壁が薄く誰かに話を聞かれる可能性が……とても重要な事なのです」
「まあ、わざわざこんなところまでエリートのあんたらが来るんだから重要なんだろうな。わかったよ。断ったら国家反逆罪とかで捕まえる気だろ? どうせ」
「い、いえいえ、そんな恐れ多い……」
近衛兵に連れられ、ゴメスンの前方に1人、後方を守るように2人に囲まれて停められた馬車内へ案内された。
「いや、この馬車も防音に優れてるとは思えないんだが」
「いえ、馬車に遮音の魔法を使用しております」
馬車の中に緑色のローブに身を包んだ、見るからに魔法使い然とした者が手を馬車の内壁に付けて何かしらの詠唱を聞き取れないほどの小さな声で呟いている。
その者のローブには王宮の者の証である竜を象った紋様が黒く刺繍されている。
近衛兵に促されたゴメスンが馬車の中で座った。
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