俺が選ばれた!? けっけっけ!

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「さて、早速で悪いのですが、今から王宮へ来ていただけないでしょうか?」 「さっきから来ていただけないでしょうか来ていただけないでしょうか何回言うんだよ。じゃあ最初から王宮に呼べよ。後、要件なんだよ」 少しイラついたゴメスンが眉間にシワを寄せて、不快な態度を隠そうともせずに膝を叩いた。 「それが……あなたが……魔王を討伐できる、唯一(ゆいいつ)の勇者である事が、王家の水晶、また王宮専属魔導師により判明したのです」 「なにが? ……え?」 近衛兵の口から告げられた言葉は、ゴメスンに向けられる他のどんな言葉より人を驚かせることのできるものだっただろう。 よだれが落ちそうなほど口を開けて固まってしまった。 この世界に魔王というものが現れて10年。 王家の起源より伝わる、伝説の勇者が現れる言い伝えの魔王現れしときより10年という言葉と同時期になる。 「勇者が、現れたのか?」 「現れた、というより、あなたが勇者なのです」 「……は? ああ……なるほど。わかったぞ」 突然、ゴメスンが馬車を降りようとする。 「ゴ、ゴメスン様! どちらへ!?」 「うるせぇ! 寄ってたかって騙そうとしやがって! こちとらてめぇらの何倍も悪事を働いてきたのよ! この程度で騙されるかよ! バーカ!」 馬車を蹴破らん勢いで開けると、何事もなかったかのように破れた清潔とは程遠いポケットへと手を入れて歩き始めた。 「しっかし、なんだ? 短剣は本物に見えたがなぁ。人身売買で俺を商品にできるのか?」 独り言をしゃべるゴメスンの後ろから近衛兵が走って追いかけてくる。 「ゴメスン様!? お待ち下さい!」 「まだ用があるのか?」 「私どもはゴメスン様を騙そうなどと思ってはおりません!」 「騙す奴が、はい今からあなた騙しますね、とでも言うと思ってんのか? そりゃそう言うだろうよ」 近衛兵が黙った後、なにかを決意したかのように懐へ手を入れた。
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