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「やっと起きましたか?ねぼすけさんですね」
そんな声とともにくすくすと微笑むような笑い声が聞こえてくる。
彼は心底驚いた様子で声の聞こえるほうに目をやる。
そこには大人びた女の人が木製の椅子に腰掛けて読みかけの本にしおりを挟んでいた。
彼女が読んでいる本は見たことのある文字で書かれているはずなのに何故か読めない。
その事を不可解に思う彼だったが、夢を見ているような感覚だった故、それに対して言及するようなことはしなかった。
彼を呼びかけた彼女の容姿はこの世のものとは思えないほどに端麗。
ボブカットの金髪と大きい目、小ぶりな唇。
日本人が欧米人の美女を見て美しいとは思うがなんか違うと思ったりすることは少なくない。
しかし彼女は、どんな人種が見ても見惚れるであろうレベルの顔立ちをしていた。
それでも彼はそんな彼女を見ても別に何か思った様子もないようで、訝しげな表情を隠すこともせずにこう返した。
「お前どこから現れたんだよ、さっきいなかっただろ?というかどちら様ですか?」
彼女は一瞬少しだけ残念そうな顔をしたようにも見えたが、それは気のせいか否か。
そんな気配は微塵も見せずに座っていた木製の椅子から腰を上げて話し始めた。
「ここって私固有の世界的なものなんですよね、だからここの物は私が自由に出したりしまったりできるんです。
さっきは随分と気持ちよさそうに寝てましたがベッドとか出してあげたほうがよかったですか?」
「つまんねえ冗句はいいから早く話せって」
彼は間髪入れずそう返すと、むすっとした顔で続きを話す。
「えぇとなんでしたっけ?私が誰かでしたっけ。
私の名前は……これは別に言わなくてもいいですよね」
「言えよ」
彼は頭をぼりぼりかきながらそう漏らす。
「私は実は、
神様なんです!」
「そうですかそりゃよかった」
またもや間髪入れずに返された神さまかもしれない誰かは、がっくりと肩を落とすのだった。
……自称神さまがたったの数瞬哀しそうな表情をしたのを彼は見逃していなかった。
目を細めて訝しげにした様子の彼だが、すぐに気のすることでもないと考え直したのだろう。
最低限の質問をし始めた。
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