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「祥平くん、お疲れさま。お昼食べに行かないの? 」 顧問の大森美羽が声を掛けてきたが、祥平はうつむいたまま応えた。 「もうあと応援だけなんで」 体育館には6面のバドミントンコートが張られているが昼食休憩の今は誰もいない。 祥平は負けたコートの真ん中で体育館が無人になってからも、座り込んだまま立ち上がれずにいた。 「その涙は、頑張ってきた証拠。祥平は入部してきた時からホント一番頑張ってたもんね」 「どれだけ頑張ってきても、試合で勝たなきゃ意味ないですから」 仲間たちにも一人にして欲しいと告げていた祥平は話しかけられたくない気持ちから、ぶっきらぼうな返事になってしまっていた。 それにも負けじと大森は隣に腰かける。 「うん、そうだね。でもやってきたことは一つも無駄にはならないんだよ」 プラスばっかり!と拳を振って力説してみせるが祥平の視線は床を見たままだ。 「負けたことも、その悔しいって気持ちも、とっても貴重なんだから」 そんな訳がない。 「優勝して嬉しい方が貴重ですよ」 大森は、んーと唸る 「まぁ…県の大会だからね。これだけの人数の中での優勝は、確かに貴重な体験ではある」 大森は実際十年前の同じ大会で優勝を経験していた。     
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