0人が本棚に入れています
本棚に追加
「祥平」
口に頬張りながら返事する祥平に佑真は悲しげな目で言った。
「フラれたばっかで次は大森かよ」
「バーカ」
祥平は食べていた箸で佑真の背中を刺す真似をする。
「そんな怖い顔してたら新しい恋も逃げちゃうぞ。ホレ、これでその怖い顔見てみ」
そう言って向けられた鏡には、涙で腫れた目が映る。
確かにこの顔は、ある意味ホラーなのかもしれない。
「なさけねぇ顔」
呟く祥平のことを佑真は慰めたりはしない。
逆の立場だったとしても恐らく同じだろう。
どれほど悔しい思いをしているか、皆わかっている。
「何だよ、新しい恋って。まだ別れて3日だぞ」
「“フラれて”ね。俺は女子からも慕われてるからさ、色んな情報が入ってくるんだよ」
そう言ってニヤッと笑う佑真は確かに後輩達に厳しい俺と違って、こいつは皆に優しい。いや、女子に優しい。
「あ、祥平センパーイ。お届け物でーす」
そう言いながら、後輩の茜が二人の方へ駆け寄ってくる。
「これ、応援に来てくれてたOBの先輩方から頂いた差し入れです!祥平先輩にだけ渡せてなくて」
そう言って500mlのスポーツ飲料を両手で差し出す。
「ありがとう」
「いいえ! 先輩たちも来年は差し入れ持って来てくださいね!」
最初のコメントを投稿しよう!