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悔しさを押しやるように冗談めかして沙也に笑って言ったが、3位の方がリアルでしょと更に的確なことを言われてしまう。 体育館に戻ると皆思い思いの場所でウォーミングアップを行っている。 試合開始までは、あと20分ほど。もう、あのコートに自分は立てない。 祥平が、ふぅっとため息を付いて、応援席に座ると隣に座った沙也の口から本日3度目の話題が出た。 「先輩、亜子先輩と別れたって本当ですか?」 後輩にまで知られていることに自分の世界の狭さを知ったような気がした。 「あぁ、うん。別れたよ」 沙也は、良かったと口にした後すぐに選んだ言葉が悪かったと気が付きオロオロしながら続けた。 「あ、あのすみません。フラれて良かったとか、そう言うことじゃなく、あ、フラれたって言うか…えっとえっと……」 「大丈夫。フラれたから」 その困惑ぶりと、そこまで知れ渡っていることが、もはや、おかしくて祥平は笑いながら応えた。 「えっと。じゃあ亜子先輩のこと……まだ好きなんですか? 祥平先輩から告白したんですよね? 」 「よく知ってるね」 嫌みではなく、感心したのだが沙也はすみませんっと、また頭を下げた。 「まぁ、何とも思わないと言えば嘘になるけど。ただ2年間ずっと片想いしてて、やっと付き合えるようになった時、好きかどうかより達成感しかなくなっちゃってたんだよね」 「達成感?……登頂!みたいな感じですか? 」 祥平は苦笑いしながら応じる。 「うん。そんな感じかもね」 「好きかどうかよりもですか? 」 困った顔で頷く祥平を見て、それは確かにイヤだと言って沙也が首を振る。 「そりゃフれるよね」 「否定できませんね。でも……」 「でも? 」 「でも、先輩が未練無いみたいで良かったです!」 それってまさか……思った瞬間、頭に激痛が走った。 「先輩? 祥平先輩? 大丈夫ですか! 」 新しい恋って、これのことだったのか? 薄れる意識の中で佑真の言ったことを思い出していた。
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