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「はい。高校球児のような悔し泣きが出るくらい何かを頑張った経験を、しっかり味わうことができました。」
「唯一のオプションが負けた悔しさを味わいたいということでしたもんね。確かに大人になってからだと、必死に頑張ることも難しくなってしまいますからね」
「本当のことを言うと恋愛なんかにも色々オプションを付けたかったんですが金額的に厳しくてやめちゃいました。でも恋心も少し思い出せたので本当に良かったです」
祥平は、まるで中学生のように頬を赤らめて言った。
「そうですね、時間的な問題もあって回想のみの部分もありましたが、満足していただけたなら何よりです。金銭面も、社長さんなら問題無いんじゃないんですか? 」
不思議そうに訊く秋津に首を左右に振りながら祥平は恨めしそうに言う。
「経営者と言っても、自分が自由にできる分は意外に少ないもんなんですよね。今後の不安もありますし」
そんなものですかと秋津が大袈裟に頷く。
「まぁ、叶えたい夢があれば、またいつでもお越しください。オプションの数も、どんどん増やしていくつもりです。今回の武内さんの“負けた悔しさ”と言うのも需要があるかもしれませんね」
「予約が入ったら私にもインセンティブくださいね」
冗談か本気かわからないトーンで言うと祥平は、ではと頭を下げて帰っていった。
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