朝の河川敷

1/2
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ

朝の河川敷

 珍しく、日の出直後に目が覚めた。  いつもなら確実に寝直すところだが、何だか今朝は目が冴えていたので、たまにはと早朝散歩に出た。  家の近くには川があるので、川沿いをぶらりと歩いて戻るとしよう。  散歩コースを決め、川に向かう。と、こんな時間だというのに、河川敷にたくさんの人が横たわっている光景に出くわした。  何十人…いや、何百人でもおかしくない数の人間が、ずらりと河川敷に横たわっている。  夏場だから、自治体がラジオ体操の予定などを組んでいて、新手の体操を皆で行っているのだろうか。でもそれにしては、指導者らしき人や音楽をかける機材も見当たらないし、そもそも横たわる人達は誰一人として動いていない。  これはいったい何の集いなのだろう。首を傾げながら横たわる人の群れを見ていたら、川の方から数人の男性が河川敷に上がってくるのが見えた。  内の二人が肩に担いでいた人を河川敷に下ろす。それを見ながら、一番年配らしき男性が声を発した。 「これで全部か?」 「ええ、これで終了です」 「今年は多いな」 「梅雨前に、季節外れの大雨で川が氾濫しましたからね。あれの被害がほとんどですよ」 「ああ…そうだったな」  男性達のやりとりが、ますます俺を混乱させた。  今の会話の内容は何だ? それに、運ばれてきて降ろされた、ぐったりと動かないままの人。  見ているもの、聞いたことが頭の中でぐるぐると回る。でも上手くまとまらないそれを、男性達のさらなる会話が答えに導いた。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!