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もし私が男だったら、新田さんはもうちょっと優しいのだろうか。それとも、男でも茶渋がついてるって怒るのだろうか。
昼休憩が終わるまで、あと五分。私は給湯室で、湯呑みを洗っていた。ゴシゴシゴシゴシ。茶渋がとれるように力を入れる。シンクには、手付かずの弁当があった。
──なんか、ばかみたい。
給湯室のゴミ箱に弁当を捨てようとしていたら、腕を掴まれた。顔をあげると、新田さんが立っている。彼はふん、と鼻を鳴らし、
「なーんか変だと思ったら、こういうこと」
「……」
「アンタ、こんなもんで神崎くんにアピールしようなんてショボいわね。彼の方が百倍料理上手いのに」
私はむっとして、新田さんをにらんだ。
「べつに、神崎くんにアピールしようとしたわけじゃありません」
「じゃあなによ」
何かと聞かれたら困る。ただ、新田さんに言われた女子力2点、という言葉が、妙に胸にくすぶっていたのだ。私が黙りこんでいたら、新田さんがお弁当箱を奪った。
「あ」
「捨てるの勿体無いでしょ。こんなのを神崎くんに食べさせるのは忍びないしね」
新田さんは、まずいとか、なんでおかずが全部茶系なのよ、とか文句を言いながら、箸を進める。
「今度はもっとおいしいのを作ります」
「作らなくていいわよ、あんた料理の才能ないんだから」
「……」
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