前編

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 私がうつむいたら、新田さんが叫んだ。 「あーもうわかったわよ、作れば!?」  ただし私はもう食べないからねっ、と言い、新田さんはお弁当箱を突き返してきた。 「ごちそうさまでした、まずかったです」  そう言って、さっさと歩き出す。私は空になったお弁当箱を見て、口もとを緩めた。  その日以来、私は毎日お弁当を作るようになった。  やがてカレンダーが、9月から10月になった。  秋が深まり、一枚上に羽織らないと厳しい季節だ。私も新調したカーディガンを、制服の上に羽織るようになった。  ある日、新田さんが有給申請書を出すのを見かけた。私は彼に近寄って行き、 「新田さん、有給ですか」 「ええ」 「どこか行くんですか?」 「北海道」 「えっ、寒くないですか」  寒いわよ、あったりまえじゃない。あんたバカ? 新田さんは、矢継ぎ早に言った。 「お土産、買ってきてください」 「何が食べたいの」 「カニがいいです」 「嫌よ、荷物になるから。お菓子とかでいいでしょ」  それから新田さんは、三日休んだ。  新田さんが有給をとってから三日目のこと。  私はランチの時間、お弁当を食べながらスマホを見ていた。料理サイトをチェックしていると、神崎くんがコンビニから帰ってきた。 「お帰りなさい」     
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