233人が本棚に入れています
本棚に追加
/28ページ
私がうつむいたら、新田さんが叫んだ。
「あーもうわかったわよ、作れば!?」
ただし私はもう食べないからねっ、と言い、新田さんはお弁当箱を突き返してきた。
「ごちそうさまでした、まずかったです」
そう言って、さっさと歩き出す。私は空になったお弁当箱を見て、口もとを緩めた。
その日以来、私は毎日お弁当を作るようになった。
やがてカレンダーが、9月から10月になった。
秋が深まり、一枚上に羽織らないと厳しい季節だ。私も新調したカーディガンを、制服の上に羽織るようになった。
ある日、新田さんが有給申請書を出すのを見かけた。私は彼に近寄って行き、
「新田さん、有給ですか」
「ええ」
「どこか行くんですか?」
「北海道」
「えっ、寒くないですか」
寒いわよ、あったりまえじゃない。あんたバカ? 新田さんは、矢継ぎ早に言った。
「お土産、買ってきてください」
「何が食べたいの」
「カニがいいです」
「嫌よ、荷物になるから。お菓子とかでいいでしょ」
それから新田さんは、三日休んだ。
新田さんが有給をとってから三日目のこと。
私はランチの時間、お弁当を食べながらスマホを見ていた。料理サイトをチェックしていると、神崎くんがコンビニから帰ってきた。
「お帰りなさい」
最初のコメントを投稿しよう!