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後編
★
ギリシア神話に、パンドラっていう美女が出てくる。パンドラは、綺麗だけど記憶力にイマイチ難があったらしく、開けちゃだめだと言われた箱を開けてしまう。それで、世の中悪いことだらけになってしまったらしい。
私はまさしく、箱を開けたパンドラの気分で会社へ向かっていた。パンドラは美人だったし、箱には希望が残ったらしいから、まだいい。
私は美人じゃないし、女に興味がない同僚に告白するという愚行を犯した。希望はゼロ。
つまりは最悪だ。
ノロノロした仕草でエレベーターの前まで行き、昇降ボタンを押すと、誰かが隣にすっ、と並んだ。それが新田さんだとわかり、私は身体をこわばらせる。
「っお、はよう、ございます」
「おはよう」
新田さんと目が合わせられず、エレベーターよ早く来い、と祈る。どやどや乗ってきた社員に押され、私と新田さんは壁際に押しやられた。新田さんは壁に手をついて、ごめん、と言った。私はカラカラの声で、いえ、と答える。
ドクン、ドクン。
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