後編

4/14

233人が本棚に入れています
本棚に追加
/28ページ
 なんで泣いてるんだろう。泣いたって仕方ないじゃないか。もう元には戻らないんだから。  私は涙をぬぐい、立ち上がって、掃除機を取りに向かった。  それ以来、私は新田さんと飲みに行かなくなった。  ★  お土産の生キャラメルは、甘くて、でもちょっとほろにがくて、舌の上ですうっと溶けた。これを全部食べ終えたら、生キャラメル、美味しかったです、って言おう。そうして、新田さんと普通に話せるようになるんだ。  だって新田さんと私は、これからも同僚なんだから。  私は、生キャラメルを毎日ひとつずつ食べた。そうして、箱の中身があと一つになったころ。  名古屋に、大雪が降った。  しんしんと、雪が降っている。お昼休み、私はコーヒーを片手に、窓の外を見ていた。朝から雪がちらついていたが、昼になって、積雪量は大幅に増えた。こんなに降るのも珍しいな。  つもったら、帰れなくなってしまう。今からホテルの予約をしたほうがいいだろうか。そんなことを考えていたら、隣に人が立った。それが誰かわかり、私は少しだけ身じろぎする。 「二十年に一度の大雪ですって」 「そうですか、どうりで」     
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

233人が本棚に入れています
本棚に追加