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なんで泣いてるんだろう。泣いたって仕方ないじゃないか。もう元には戻らないんだから。
私は涙をぬぐい、立ち上がって、掃除機を取りに向かった。
それ以来、私は新田さんと飲みに行かなくなった。
★
お土産の生キャラメルは、甘くて、でもちょっとほろにがくて、舌の上ですうっと溶けた。これを全部食べ終えたら、生キャラメル、美味しかったです、って言おう。そうして、新田さんと普通に話せるようになるんだ。
だって新田さんと私は、これからも同僚なんだから。
私は、生キャラメルを毎日ひとつずつ食べた。そうして、箱の中身があと一つになったころ。
名古屋に、大雪が降った。
しんしんと、雪が降っている。お昼休み、私はコーヒーを片手に、窓の外を見ていた。朝から雪がちらついていたが、昼になって、積雪量は大幅に増えた。こんなに降るのも珍しいな。
つもったら、帰れなくなってしまう。今からホテルの予約をしたほうがいいだろうか。そんなことを考えていたら、隣に人が立った。それが誰かわかり、私は少しだけ身じろぎする。
「二十年に一度の大雪ですって」
「そうですか、どうりで」
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