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声が上擦らないよう気をつけながら、私は返事をした。平気なふりをしても、心臓がばくばく鳴っている。その時、ふっ、と部屋が暗くなった。ブース内がざわつく。新田さんは様子を見てくる、と言い、ブースの外へ向かった。戻ってきた彼は、
「雪のせいで停電らしいわ」
課長がやってきて、復旧まで時間がかかるから、自宅へ帰るよう指示をした。私はスマホで、電車が動いているかどうかを調べる。
「電車、動いてる?」
新田さんの問いに首を振る。
「いえ……」
全線ストップだ。しばらく会社で待機しようか。
「動くまで、うちくる?」
その言葉に、私は戸惑った。以前なら、はいお邪魔します、って言えただろうに。
「でも、ご迷惑じゃ」
「そりゃ、ご迷惑よ。私は他人を家に入れない主義だし」
だけど仕方ないじゃない。
「電車が動いたら帰りなさいよ」
新田さんはそう言って、さっさと歩き出す。私は首にマフラーを巻きつけ、彼の後を追った。
外に出ると、びゅうびゅう横風が吹き付けてきた。私と新田さんは、寒風に耐えながら進み、やっとのことで彼の自宅にたどりついた。その頃には、氷漬けにされたみたいに全身が冷たかった。
「あー寒ッ、冬将軍はまじで人類を滅ぼしに来てるわね」
新田さんは文句を言いながらマフラーを外し、部屋に上がった。私はお邪魔します、と言いながら彼に続く。
私は、部屋の中央にあるものを見て、目を輝かせた。
「わ、こたつだ」
「あんたんち、こたつないの?」
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