後編

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「はい。いいですね」  私はこたつに足を入れ、はー、と息を吐いた。 「ばーさんか、あんたは」  新田さんはココアを淹れてくれた。カップを手で包み、じんわりとした暖かさに浸っていたら、急に現実感が戻ってくる。ここ、新田さんの部屋なんだ。新田さんは、いつもここで寝て起きて、ごはん食べてるんだ。 「ちょっと、ジロジロ見るんじゃないわよ」 「すいません。男の人の部屋、初めて入ったから」  意外というか、殺風景だった。というより、不自然に物がない。よく見たら、部屋の隅にダンボールが積まれていた。 「新田さん、引っ越しするんですか?」  新田さんは、ああ、とつぶやいた。 「もうちょっとしたら話そうと思ってたんだけど……アタシ、会社やめるの」  私は目を見開いた。 「そう、なんだ……」  どこへ? と問うと、北海道、と帰ってきた。 「えらく、遠いですね」 「まあね」  新田さんはそう言って、 「こないだ、有休とったでしょ? あれね、親が倒れたの」  新田さんの父親は、北海道でファームを営んでいるらしい。 「あんたにあげたあの生キャラメル、ファームで作ってるのよ」     
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