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「はい。いいですね」
私はこたつに足を入れ、はー、と息を吐いた。
「ばーさんか、あんたは」
新田さんはココアを淹れてくれた。カップを手で包み、じんわりとした暖かさに浸っていたら、急に現実感が戻ってくる。ここ、新田さんの部屋なんだ。新田さんは、いつもここで寝て起きて、ごはん食べてるんだ。
「ちょっと、ジロジロ見るんじゃないわよ」
「すいません。男の人の部屋、初めて入ったから」
意外というか、殺風景だった。というより、不自然に物がない。よく見たら、部屋の隅にダンボールが積まれていた。
「新田さん、引っ越しするんですか?」
新田さんは、ああ、とつぶやいた。
「もうちょっとしたら話そうと思ってたんだけど……アタシ、会社やめるの」
私は目を見開いた。
「そう、なんだ……」
どこへ? と問うと、北海道、と帰ってきた。
「えらく、遠いですね」
「まあね」
新田さんはそう言って、
「こないだ、有休とったでしょ? あれね、親が倒れたの」
新田さんの父親は、北海道でファームを営んでいるらしい。
「あんたにあげたあの生キャラメル、ファームで作ってるのよ」
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