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プツッ。ツーッ、ツーッ。通話が途切れ、断続した通話音が聞こえる。
「……」
私はため息をついて、ビールのお代わりを頼もうとした。
と、目の前にいきなり人が座った。その人は手を上げて店員を呼び、
「すいません、生ひとつ」
私の方を見た。
私はポカンとして、その人──新田さんを眺める。少し日焼けして、髪が短くなっていた。新田さんは久しぶり、とか元気だった? とかじゃなく、ふん、と鼻を鳴らす。
「なに一人で黄昏てんのよ」
「……新田さんの生霊ですか」
「誰が生霊よ。しばかれたいの?」
「なんで、名古屋に?」
「高島屋のデパートで、北海道展ってのがやるのよ」
仕事で来てんのよ。あー疲れた。新田さんはそう言って伸びをする。高島屋は、名古屋駅構内にあるデパートだ。その上階でやる物産展は、いつも混雑する。
「お疲れさまです」
「ねえ、神崎くん元気?」
「あ、宮下さんって新人が現れて、神崎くんに猛烈アプローチしてるので、割とギスギスしてます」
「なによソレ。アタシがいたらそんな女潰してやるのに」
新田さんは、私が食べていた味噌カツを奪いながら言う。
「で、彼氏とやらはどんな男」
「あ、えーと、ムキムキですね」
「で?」
「うーん、あと、竹野内豊に似てます」
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