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適当なことを言うと、新田さんが目を細めた。
「すぐバレる嘘をつくんじゃないわよ」
「……スイマセン」
「全く、こんなとこで一人寂しく飲んでる場合じゃないでしょ」
別にいいじゃないか。誰に迷惑かけたわけでもないし。
「新田さんは、彼氏できましたか」
「できないわよ。周りは牛しかいないし、いい男はみんな結婚してるし」
新田さんはため息をつき、アンニュイな目をした。
「あー、ほんと、オランダに行きたいわ。出会いがあるかもだし」
「行けばいいじゃないですか。まだ飛行機飛んでますよ」
「アンタ人の話聞いてた? 物産展があるんだっつの」
「キャラメル、売るんですか?」
「まあね」
「私にも売ってもらえますか、知り合い価格で」
「ズーズーしいわね、相変わらず」
新田さんはそう言いつつ、スーツケースから袋を取り出した。
「今はこれだけしかないわ」
「通販とかないんですか?」
「基本地元に卸してたからね。デパートと提携するかどうかは、売れ行き次第みたい」
私はへえー、と言いながら、箱の中の内袋を開けようと手をかけた。が、力を入れすぎたらしく──ぱんっ。袋が弾け、キャラメルが床にバラバラと落ちた。
「あっ」
「ちょっとアンタ、何してんのよ」
「す、すいません」
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